対談 CROSS TALK
地域包括ケア病棟
患者さんとご家族の
希望の暮らしに寄り添うサポートを
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田中 俊郎
副院長
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糟谷 麻梨美
看護師
TALK
THEME 01
[テーマ]
西尾市民病院が考える
地域包括ケア病棟
田中
病気そのものの治療は完結していても、自宅であったり、施設であったり、退院していくにあたってリハビリを含む準備期間が必要になったときに利用できるところが地域包括ケア病棟だね。
糟谷
そうですね。患者さんが急性期から回復期になり、安心して自宅や施設で生活を送る準備期間のサポートです。あとは繰り返し入院される方の在宅時の環境調整や予防に関わりを持って、再入院が少しでも減るようにケアしていくことも私たちの大切な役割ですね。近年は、患者さんご家族も高齢化が進んでいるので、私たち存在は益々重要になってくると思います。
田中
ご自宅に帰る予定で地域包括ケア病棟に移ったけれど、ご家族と話を進めていくうちに、希望が施設や転院に変わることも結構あるね。当院の在宅復帰率はずっとキープしてはいるけれど。
糟谷
そうですね。在宅復帰率は変わりませんが、自宅の環境が整わなくて、希望通りの退院が難しくなるという現状があります。80代90代で独居の方も増えていますし、ご高齢でも頑張って農業や漁業などお仕事をしている方が多いですから。
田中
西尾市民病院の地域包括ケア病棟は今のところ院内の急性期からの移動が大半だけど、今後は外からの受け入れも具体化していきたいね。糟谷さんが言うように入退院を繰り返さないための体制を築くことも1つの目標になるのかな。
TALK
THEME 02
[テーマ]
スムーズな連携で
患者さんを支える
糟谷
私たち看護師から患者さんに説明したとしても、先生から一言説明あるだけで患者さんはすごく安心できて勇気づけられるので、いつも先生には協力していただいていますね。
患者さんは先生のこと、とても話しやすいって言ってくれていますよ。
田中
うれしいね。僕ら医師からすると、どうしても患者さんを診る時間が看護師よりすごく少ないので、僕らが気付いていないことを教えてもらえて助かっています。あと患者さんは看護師には本音をもらすこともあるので教えてもらったりとか。急性期に比べると、地域包括ケア病棟は医療行為そのものというよりも、患者さんのその日の気分や様子を伺ったり、普通のコミュニケーションが大切になるよね。
糟谷
患者さんが安定していても入院中であることには変わりないので、しっかり見ながらも、患者さんの生活リズムが整うように、接する時間帯や普段の生活に近づいた会話を心掛けていますね。ご家族との関わりも多いので、これからの生活のことなど話せる時間をゆっくり取れることも、地域包括ケア病棟の良いところだと思います。
田中
地域包括ケア病棟は治療という目的に進んでいくのではなくて、いろいろある方向性の中から最善の退院を目指しているから、
患者さんご本人とそのご家族、看護師と相談して連携をとっていくことが大事だからね。
TALK
THEME 03
[テーマ]
急性期医療を経験した
次のステップになる
田中
患者さんが退院間近だったとしても、容態が急変することも起こり得るので、急性期での経験を積んだ医師や看護師がこの地域包括ケア病棟に向いていると思うね。
経験がないと、患者さんが退院後にどういうことが起きやすいかという予測が付かないから。
糟谷
はい、そう思います。
ベテランの看護師さんであれば、今までの経験を踏まえて在宅指導もできますし、落ち着いた気持ちで会話もできるので患者さんも安心できますね。
田中
急変に対応できるスキルはもちろん、ベッドサイドでもモニターや病状の変化に気付けるとか、そういう実践的な経験が求められるね。誰でも若手の2、3年で学んだことはすごく大きな糧になるので、若いうちの間に急性期など様々な科で経験を積んでスキルを磨いてもらいたいな。
糟谷
私も急性期にずっといたから分かることがありますし、地域包括ケア病棟にはいろんな科から患者さんがきます。
どんな要素で急変したとしても、迅速に対応するためには幅広い知識が必要です。
田中
個人的には基礎の部分を急性期で学んでもらい、地域包括ケア病棟にきて、また急性期に戻るのが良いと思う。
糟谷
それはいいですね!
それぞれの場所で見えるもの見えないものが違って、何が大事なのかも分かりますからね。